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つけ場小屋でデート - 渡部田鶴子の婚活ノート -

紆余曲折ゴールイン

2010年6月12日 長野市民新聞掲載

  千曲川のつけ場小屋が始まったニュースを聞くと、10年も前のYさんのことを思い出す。農業のYさんは60代半ば。絵本にあるような綿入れはんてんの似合う素朴なキャラクターで、よく笑い、大声で話す。苦労して進学させた2人の子供は都会に所帯を持ったが、忙しくてなかなか帰っても来ない。
 Yさんは奥さんを亡くした後、老母がお勝手仕事をやってくれたが最近亡くなり、一人住まいに。幼友達が見かねて本人とともに相談にやって来た。
 友人は改まった支度で上等な革靴を履き緊張の面持ちなのに、当のYさんは今、トラクターから降りたばかりの格好で長靴履きだ。「彼は働き者。まじめでいい男だ」と友人は強調し、彼の身の上を細かに説明。彼に会いそうな方をぜひ紹介してと付け加えた。
 Yさんは「おれは今のままで気楽でいい」と照れて、薄汚れたタオルで汗をぬぐっている。「そうですねえ、あっ、ぴったりの女性に心当たりが。試しに会ってみましょう」。と、渋るYさんにお見合いを勧めた。
 M子さんは山村育ち。戦後の何もない時代に大勢の兄妹がいて大変だった。結婚し町場に住んだが、事情があって中学生の子供を自分で育てた。やっと結婚させたら一人になり、この先を考える毎日。育った山が懐かしく、できたら自然の中の生活を願っていた。
 そこへYさんとの話。年齢のつり合いも良く、彼女は乗り気で、お見合い当日は美容院に寄り晴れ晴れしたスーツ姿で現れた。そんなM子さんの前にYさんは例のスタイルで現れ、タオルで盛んに汗を拭く。「万事休す」。案の定、見合いの後2時間もすると「どうもフィーリングが合わない」とM子さんから電話。2人でYさんの友人のつけ場小屋に行ったのだが、M子さんは小骨の多い嫌いな川魚は食べずらく、ムードもない。「悪いけれどもお断りを」とのことだった。
 一方Yさんからは「とても気に入った。畑が好きで話も合ったし、進めてほしい。今度家に連れて行くことにした」とのこと。M子さんには「もう一度だけ会ってみたら」とYさんの人柄を強調し、橋渡しに努めた。その結果、迷いながらもYさん宅を訪ねた。
 少し上がった集落で、畑に立つと西に真っ白な美しいアルプス連山があり、眼前には北信五岳。足元には千曲川が光り、素晴らしい。Yさんの生活ぶりも理解できた・・・。そして話が進み、今はお幸せに暮らしている2人だ。あんなに渋っていたお見合いも、友人のおかげで実現したと、感謝するYさん。熟年の方々は、お見合いでよく美術館巡りを選ぶが、つけ場小屋内で紆余(うよ)曲折のデートもそれなりによかったのかなと思っている。