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白川氏のセミナー聴講 - 渡部田鶴子の婚活ノート -

中年の息子思う母心

2010年3月13日 長野市民新聞掲載

 「婚活」を提唱してブームの火付け役となった白川桃子氏のセミナーを聴講しました。「結婚したくてもできない」と婚活中の若い人たち。その親御さんの時代までは、ほとんどが自然に所帯を持てたのに、今は違うのです。「待つだけでは駄目」「努力しなければ難しい」ということなのです。今や「4人に1人は結婚できない」というのですから大変です。
 セミナーでは、後ろの隅にひっそりといる小柄な老婦人のとなりに座りました。その女性はバスに酔ってしまったとか。そんな思いまでして何か訳でも。問わず語りによると、50歳の息子が気掛かりで寝られないほど悩んでいるそうです。随分前にご主人を亡くしてからは息子と2人暮らし。今日は、参考になればと出掛けてきたという。
 実は息子は、10年ほど前の法事の折、親類の長老の一言が「頭に来た」と、それ以来縁談話はシャットアウト。2度と結婚話はしないそうです。会社員の息子は遠距離通勤で遅くの帰宅。毎日無事を祈って待つ母の気持ちは同情せずにはいられません。
 女性は自分の来し方も話してくれました。町場育ちなのに、父は「農家は一生食べるに困らぬ。もらわれたが縁だ」と言い、長女から順番に雪深い山村に嫁ぎました。彼女の嫁いだ先は、まだ学校に通う子供が2人、未婚の小姑(しゅうと)も2人と両親など10人の大家族で、朝から星を見るまで野良仕事に明け暮れたそうです。自分の人生を決めることができる今の女性たちに比べ、信じられない話でした。
 さんざんの苦労の末、まさか今になってひっそりと大きな底冷えする家に1人寂しく座っている。そんな老後になるとは、夢にも思っていなかったそうです。講義を聞いた別れ際、バスを逃したら1時間待つのでと、ゆっくりもせず帰って行きました。
 この女性は今日、何かヒントを持ち帰ることができただろうか。春風とともに彼女に良い知らせが舞い込んでほしいと願いながら見送りました。