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私のお見合いノートから - 渡部田鶴子の婚活ノート -

父同士がけんか 破談

2010年2月13日 長野市民新聞掲載

 先日、駅前の人込みの中でМ子さんに会いました。ああ、あのときの―と駆け寄り、もう20年も前のあの“事件”にタイムスリップ。私は涙こぼれる思いでした。
 当時、27歳のМ子さんと32歳の男性のお似合いのカップルの誕生でした。双方の家族も大賛成、後は結婚式を待つばかりのおめでたい縁組みでした。М子さんは養子さんを望んでいましたが、相手は気楽な三男の方で、2人は独立した新所帯を持つことにしました。
 挙式会場に予定したホテルで両方の家族の顔合わせをしました。ところが、その小宴のさなか、酔いのまわったお父さん同士がけんかになってしまったのです。
 女性は“跡取り娘”ではあるが、妹もいるため親は家から出すと決め、父はその先に期待して喜びを隠せずにいました。その席で80すぎの祖母は「こんなに立派な息子さんをくださるなんて、本当にありがとうございます。長生きして待ったかいがあった。これで一安心。当家の名が絶えずに済む」とお礼の言葉を述べたのです。これを聞いた男性のお父さんが怒ってしまい、「養子に来いとは何事だ。わしの目の黒いうちは絶対にそれは許さない」と断じ、一瞬で破談になってしまいました。
 いつも「かまどの灰まで全部お前のものだよ。おむこさんをもらうんだよ」とМ子さんを育ててきた祖母は、嫁がせることを親が承知した事情を知らなかったのです。
 М子さんの父は8人兄弟で、姉妹ばかりの母の元へ養子に入った身であり、養子になれば自分の名字を変えるのが当然と考えていました。しかし、それはどの家にも大勢の兄弟がいた時代のことで、核家族化が進んだ現在ではすんなり受け入れられるとは限らないのです。「家を継ぎ」「お墓を守らねばならず」「家名も絶やさぬよう」にとこだわることも娘へのプレッシャーになり、実にかわいそうなことです。親が相手を気に入らなければ結婚できないのですから。
 2人は気の毒な道を歩みます。男性は交際中、М子さんを毎朝車で迎え、勤め先の会社へ横付けする仲で、近所でも勤め先でも来るべき結婚のその日を祝福していたのに、信じられぬ結末。そして彼はその後県外へ転勤し、М子さんもひっそりと家を離れて一人暮らしに入りました。家は妹が継ぎました。
 当の父母たちは皆亡くなりましたが、あの悪夢のような1日はいまだに2人の気持ちを深く傷つけ、運命の糸は切れ切れになったままです。親たちの「家」にこだわった結婚観、家族観の犠牲でした。祖母の勘違いからの悲劇でしたが、それを招かぬ良い手だてはなかったのでしょうか。