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私のお見合いノートから - がんばれ中高年 -

第16回 トレードマークは長靴姿 - 素朴なキャラクター幸せを呼ぶ -

1996年4月20日 信濃毎日新聞全県版掲載

千曲川のつけばのことになるとYさんを思い出す。
 もう何年も前のことになる。兼業農家のYさんは純情な愛すべき人。絵本にあるような綿入れはんてんの似合う素朴なキャラクターで、大声で話す。子供たちを苦労して進学させたら皆都会で落ち着き、所帯を持った。忙しがってなかなか帰っても来ない。奥さんを亡くした後、老母がお勝手仕事を何とかやってくれていたが、母も亡くなり、とうとう一人になってしまった。
 幼友達が見かね、親友が付き添い、相談にやって来た。友人は改まった支度をし、上等の革靴を履き緊張した面持ちなのに、当のYさんは今トラクターからおりたばかりの格好で長靴履きだ。
 「Yさんは一番早くに奥さんを亡くしてしまい残念だ…。彼は働き者でいいヤツ。まじめでいい男だ」と親友は強調し彼の身の上を細かに説明する。
 傍らのYさんは「ワシは今のままで気楽でいいんだ。村の友達がうるさくて…」と照れまくり、うす汚れたタオルで汗をぬぐう。
 「あっ、ピッタリの女性に心当たりありますよ。ぜひ会ってみましょう」としぶるYさんにお見合いをすすめた。
 お相手のM子さんは山村育ち。戦後の何もない時代に大勢の兄妹で大変だった。結婚し町場の狭い所に住むようになり便利ではあるものの、子供らも巣立ちひとりになって、また山が懐かしい。自然の中で住みたいと願っていた。その矢先の話でとても乗り気だ。お見合いの当日は美容院により、晴れ晴れしたスーツでさっそうと現れた。
 そんなM子さんの前にYさんは例のスタイルで現れた。そしてタオルを取り出しては汗をふく。「万事休す!」。案の定二時間後「どうもフィーリングが合わないのでお断りしたい」とM子さんから電話が来た。
 千曲川のつけばに行ったんだそうだ。大事な新しい靴は傷だらけ、小骨の多い嫌いな川魚は食べづらくてムードがない。「悪いがお断りしてほしい」とのこと。Yさんからは「とても気に入ったよ。畑が好きで話も合ったし、進めたい」と言って来た。今度家に連れて行く事にしたとのこと。
 M子さんにはもう一度だけ会ってみたら…とYさんの人柄を強調し橋渡しに努める。M子さんは、迷いながらYさんの家を訪ねてみた。西に真っ白な美しいアルプス連山があり、北信五岳もワイドに眺められ、素晴らしい。生活ぶりも理解できた、長靴姿はYさんのトレードマークだとご縁が進み仲良くやっている。
 今も時々、切り花や野菜が届く。親せき以上だと言ってくれている。牧歌生活のお二人の幸せは続いている。熟年の方々はよく美術館めぐりを選ぶけど、つけば案内も面白いデートコースかもしれないなと思っている。