講演依頼は年度末に多い。先日の大雪に埋まった北信の公民館で今年度の予定は終わった。昨年の晩秋、二週間続けての泊りがけの伊那行きは忘れられない。松本以南は初めて。ロマンをかりたてるあこがれの飯田線は、秋晴れに輝く柿が美しく、車窓を流れる風景はのどかでやさしい。
早々資料が送られてきた。カラー刷りありイラストあり、盛りだくさんに工夫されている。意気込みがビンビン伝わってきた。
主催は農業振興センター、社協、JA伊那、伊那市…と名が連なっている。「さきがけ男塾 ピカピカに男を磨こう」「魅力ある男性像」「男の心がまえ」…項目が列記してあり、参考になることすべて話してほしいとの注文で、いつもとは様子が違う。頑張るんだ、やってみるという熱気が伝わる。そのエネルギーにこたえて私は知恵をしぼって準備をし、充実した二夜を責任持って務めようとうかがった。
さて会場は夜目にも立派な市役所の広い会議室。独身男性ならどなたもOK.。大勢の青年たちが次々集まってくる。「今夜は違うぞ!男塾」と芸術的な大ポスターが張られムードは満点だ。
講演後は活発な質疑応答。後列に控える十名ほどの結婚相談員さんの面々は年季の入った風格で頼もしく親しみやすい方々。ご苦労はよそとも大同小異。どこも男性の結婚難は深刻だ。妙案も決め手もないまますでに社会問題になっている昨今だ。平均年齢三十六歳、まじめは好青年ばかり。早速イベント計画作りが始まりレストランを借り切ってのクリスマス、正月のボーリング大会…。あの手この手の交流会。私はこの調子だとよきカップル誕生が期待できるのではとほほえましかった。
県内の適齢期の男性の未婚率は全国平均より高いそうだ。小海町へ行った時、会場わきを流れる狭い川が千曲川と知った。その川上が川上村。夏、高原野菜で汗を流し冬はゆっくり休めるから嫁不足はなく、実にうらやましいと町会議員さんがおっしゃっていた。そんな恵まれた地域は数えるほどだろう。
され別れぎわ、別れかねて広いロビーに移りまた盛り上がる。ぜひ昼間、もう一度来てアルプスの景観と天竜の流れの美しさを見てほしい、ローメンと馬刺しも食べてほしいと言ってくれる。
一人が伊那市の歌が大好きだと歌ってくれた。私は急いでテープに収めた。後日観光課に頼み市の紹介パンフを送っていただき、より親しみやすい町となった。こんなふる里を心より愛してやまぬ彼たちよ、何とかよき伴りょに恵まれてほしいと心から願わずにはおれない。
その後も企画の成果や、相談の電話などがある。次はお花見だそうだ。成功を祈って受話器を置いた。