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私のお見合いノートから - がんばれ中高年 -

第7回 会話がなくなって… -傷つけないで つかず離れず-

1996年2月17日 信濃毎日新聞全県版掲載

 一年ぶりにTさんが事務所に現れた。出会いはちょうど昨年の今ごろ、お盆すぎから同居に踏み切ったカップルだ。「どうです、うまく行ってますか?」。私は満面の笑みをたたえながらTさんに問いかけた。ところがヤレヤレとソファーに腰を沈めるとタバコを一本取り出して、火をつけるでもなく疲れた様子で私を眺め、「もうだめになりそうなんですよ」と肩を落とす。
 六十歳に近いTさんは、小工場のパートさんの世話係。お相手はスーパーで働く小柄でやさしい人。「とにかく、あのころは早く一緒になりたくて、彼女からの明るい返事はうれしかったですねェー、早く仕事を終えて帰るのが楽しみだった。品数多く並ぶ夕飯はうまくて五キロも太って、皆から冷やかされて…」。
 「ちょっと待って、それなのに、どうしてもうダメと言うの?それどういう意味?」と私はせき込んで聞き返す。「初めはいろいろたくさん話すことがあって、とても楽しかったのにいつの間にか会話がなくなってしまって…」
 彼たちの出発には輝く将来があったはずだ。ギクシャクしてきたのはどういうわけだろう。人間はどうも過去を語りたがるようだ。お互いの過去を話し合い、理解してもらい同情してもらっているうちは良かったが、ふっと孤独のころを懐かしむ気持ちに引き戻される自分に気づいて、話しかけられてもつい無口となり、昔のことを考えてしまう。思い出したようにTさんはタバコに火をつけた。「皆はどうなんでしょうかね」と聞く。
 価値観の同じ人、趣味の合う人、第二の人生と割り切って飛び込んできたというような人、子供たちが遠くに居る人などは、うまくいっているようだ。
 一方、何かにいまだ頼れるという気持ちを持っている人、孤独時代にそれが自分の"宿命"と悟りきった人…こんな感じの人は、やはりそれぞれの孤独に戻っていく傾向がある。「時々一人にさせておいてくれ、といった感情がお互いに出はじめていたことは事実です」。
 孤独同士寄り添って確かな人生を築いてゆくという努力と情熱に欠けていたのかも知れません、孤独が身にしみすぎていたのかも知れませんという。
 「ところでお相手は何とおっしゃっているのですか」「しばらく別居して気の向いた時に会うのが良い、と言ってます。別に嫌になったわけではなさそうなのです」「そうですね、お互いを傷つけず、つかず離れず、楽しむ時は十分楽しみ合う、これがお二人には良い方法かも知れませんよ」。
 話は尽きない。窓外には春の気配を感じさせる青空が広がっていた。