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私のお見合いノートから - がんばれ中高年 -

第2回 離婚10年 独りの彼女 -過去を振り返らず 幸せつかんで-

1996年1月13日 信濃毎日新聞全県版掲載

「長い休みは大嫌い、お正月休みも連休も要らないの」  T子さんは「一人ぽつんは寂しくて」と弱々しく言う。平日は仕事で救われてるけれど、暗いアパートの明かりをつけると、どっと寂しさが押しよせて…。
 でも、また明日があるからって、テレビをつけ放して、ニャー子と夜を過ごす。離婚して自由を手に入れたものの、こんな日々がもう十年余。最近つくづく一人って寂しいと思う。四十半ばの彼女はこのところ頻繁に訪ねて来る。
 子供が欲しかった。子供がいたらこんな落ち込みはなかっただろうと言う。「残念」「悔しい」が塊りになって胸いっぱいになるんだと涙をこぼす。十人もの兄姉で育ったのに気楽に出入り出来るところがないらしい。近くに四人も姉たちがいるというのに。
 マザコンの典型男と見合い結婚したのが私の失敗だったという。義母の面倒な性格までは三ヶ月のおつき合いでは少しも分からなかった。まさか針のむしろに座らされるような扱いをされるとは、若い彼女は筆舌に尽くせぬ苦しみを味わわされたらしい。
 疲れて帰ると待ちかまえていて、あれやれ、これやれとこき使われ、座る間もない。細かく口うるさい。朝も六時からたたき起こされ狭い家中を大掃除のごとくにふき清め、やっと出社。二年間頑張ったが、ついに会社で倒れて、そのまま入院。心身の消耗は極致に達していて、こんこんと眠り続け、病院でも皆の同情を集めたそうだ。娘のころは太めで、アンパンと呼ばれていたのに、太れなくなっちゃって、おまけに最近はシワが急に増えたと言う。
 母一人、子一人で母が大事に思う気持ちは良く分かる。ただその異常な母・子の結びつきは理解出来ない。彼は母の方にばかり向いていて、何の頼りにもならぬ。そんな相手を選んで苦しい結婚に踏み込んでしまった悔しさを随分引きずって、結婚はもうコリゴリと思い続けてきた。が最近になってこんな人生つまんない!としみじみ思えて相談しているのだ。娘さんのある人が良いかな?孫も気楽に抱けたら楽しいもの。
 やっとお見合いする方が決まった。十分すぎる時間をかけた。過ぎてしまった昔の事はもう振り返らない。早く気を取り直して、よい出会いをしよう。一人で悩んでないで!幸せは勝ちとるもの。今までの損を早くとり戻そう、と励まして送り出すのだった。